1981年、大石静と永井愛の二人が設立。ともに卯年生まれであったことから、
劇団名を「二兎社(にとしゃ)」としました。それぞれのオリジナル作品を交互に
上演し、二人は役者としても出演。『カズオ』などの「早替わり二人芝居」で人気
を博しましたが、大石の退団した1991年以降は、永井の作・演出作品をプロデ
ュースする演劇ユニットとして活動を続けています。
二兎社の新機軸となった「戦後生活史劇三部作」は、敗戦直後や高度成長期、学園紛争末期などの転換期に、
時代に翻弄されそうになりながらも、自らもしたたかに変化を遂げて生きていく庶民の姿を描き、「日本人」を舞台上で再発見したと高く
評価されました。それに続く新作『兄帰る』(1999)では一転して、最先端の
ライフスタイルを持つ今どきの若夫婦を取り上げ、彼らの見かけと内面のギャップを浮き彫りにして観客を沸かせました。
これ以後もチェーホフを大胆にアレンジした『萩家の三姉妹』(2000)、文豪夏目漱石の作品を現代に甦らせ、
独白を多用して「自己」と「他者」の危うい関係を表現した『新・明暗』(2002)、教育現場の「日の丸・君が代問題」に果敢に切り込んだ『歌わせたい男たち』
(2005)など、自ら考える姿勢を演劇の場から発信し、観客自身を当事者にするような、「考えるエンターテインメント」としての作品を提供しています。 |