『日暮町風土記』は演劇鑑賞団体である四国市民劇場との共同企画というユニークな制作方法により生まれました。単に「買う側」と「買われる側」という市民劇場と劇団の従来の関係を脱却し、お互いに意見を出し合ってよりよい舞台を作ることを目的とした試みです。３年ほどかけて市民劇場の会員の皆さんと作品についての話し合いを重ね、企画を温めてきました。

今回の舞台となる日暮町も四国のある町がモデル。四国での取材旅行、そこで訪れた町や出会った人々、提供された様々な資料などが作品に色濃く反映されています。また、永井愛は、共同企画の趣旨をよりいっそう掘り下げ、四国そのものに焦点を当てるのではなく、四国という風土から見た現代日本の様相をあぶり出しました。

『日暮町風土記』が一地方の物語にとどまらず、普遍性を持つ世界を紡ぎ出すことができたのも、共同企画という試みから得た大きな収穫の一つです。